暇つぶし?

いやねえ、旦那。なんてことはないんですが、ちょっと小耳にはさんだんですけどね。いやいや、お手を休めていただくほどのことではないんです。ただちょっとお暇つぶしになってもらえればなんて、そんな程度の話ですよ。ええもちろん、お…

ある閑話

なんだか最近は私が私ではないように思うのです。 その私とは何なのか、どれが私と私が言えるのかわかりませんが、 ひょっとしたらこれが私と言える何かもあるのかもしれませが、 ですけれどどうしてでしょう、 自分の中に他人がいる…

指いっぽん

指をいっぽんだけのばして どこまでいくか競争しよう だれが勝ったか負けたじゃなくて 届く先など関係なくて 指の大きさ小ささ太さ細さ ごつごつひょろひょろしゅっとした いろんな指をそれぞれに のばしてみようってそれだけなの…

なんやねん

おや、どないしました? いや、べつにどういぅことはないねんけどね。 いやいうて、そないなたいどやったらこちらもきになるやんか。 なんでぇな、そんなにきにせんといてぇや。 そんなことなるとますますきになるわぁ。 ほんまたい…

そのままそこにあるもののように

そのままそこにある石のように 静かでいること 謙虚であること 強度を持っていること そのままそこにある木々のように 光と水を希求すること 風と笑いあうこと 虫と戯れること そのままそこにある家のように 行くも戻るも変わら…

秋の昼

風がごうごう ごうごう 昼下がりの 森 の原っぱ ごうごうごう と木が揺れる ざわざわざわ と木が揺れる 昼下がりの 城跡 近くに走る 小さい川も ごうごう ざわざわ びゅーびゅー がさがさ ごとごと ざわざわ ささらさ…

今のうちか?

逃げてるうちは 華 冷めてるうちは 薔薇 追ってるうちは 可憐 決まってるうちは サクラ いやーどうもぼくもこのとしでねー それなりにやってはいるんだけどねー 言ってるうちが 仏 遊んでるうちが 天下 笑ってるうちが 平…

爪きり

足の爪を ぱちりと切って とんだかけらを 拾い上げ ちいさく折り畳んだ ティッシュペーパーの上に  そっと置いてあげる 午後の日差しが となりの家の そのむこう 赤い空が やってきた わたしの足を なでていく わたしの腕…

レッテロ

レッテロ とはなんであるか? レッテロ とはテロレロのメロ系である。 レッテロ とはキプチンのパレイロ・ヌンからきた言葉である。 レッテロ とはイーソコソーソコの起源をもつものである。 レッテロ とはつまりミネーロのシー…

山が火事で燃え上がる日

一羽の鳥が自分のくちばしの中に水を貯えては 1滴、また1滴と燃え上がる火の中へ落としていく そこである動物は言う そんなことをしても無駄だ その鳥は言う 自分にできることをしているだけ しかしさらに別の動物は言う それは…

酒飲んで ほい

酒飲んで ほい つまんで はい おっとと ほい どうかね はい どうした ほい まだまだ はい いいねぇ ほい そこらで はい そのまま バイ!

歴史のうず

いまここに 僕がいるということは むかし だれかがいたということ いまそこに あなたがいるということは むかし だれかがいたということ いまどこかに だれかがいるということが むかしも だれかがいたということ だれにも知…

真っ暗闇のなか一粒の水が飛びだしてぽちゃりとはじけた そこからトビウオが虹を引き連れて空を渡った 矢の軌道は天王星を中心とした 紫色した蛇が「私が今日から主(あるじ)である」 という叫びにも似た宣言より早く 黄褐色の左手…

腹減りにて

ぶっきらぼうに外を歩いているときさ なんだか急におなかが空きやがってよ なんだこれ 変な病気じゃねえかって心配するぐらい ころっと腹ん中が変わりやがって でも思い当たったら そういやその日 まだなにもめし食ってなかったん…

東峰の空

天狗まどろむ 東峰の空 雲が流れる 鳶ガラスの声 ようやく着いた 暁の彼方 そこから先は 足がすすまぬ 燃えよ燃えよと 火よ燃えよと 焦がれ焦がして ああ 燃え尽きて やっぱりここから 先には行けぬ 足がどうやら 喰われ…