#031: ファシリティの共有
『未来の世界を想像するチャンネル』これまで途切れ途切れの時もあったけど、
「地域社会圏主義」という本をテーマに、いろいろ続けてお話をしてきました。
それはとても面白いテーマにあふれているんだけども、
それは社会問題になっているものが、実は住宅の問題じゃないかっていうようなアプローチから
「そうではない」というあり方で、
言えば本当にそこに暮らす人たちの幸せ、
豊かさっていうものを中心原理としてイメージしたときに、
建築の空間がどういうふうな役割を、あり方とともに提案できるのか
そういったことを実験的に書かれているものだったりしました。
今日は、そこで紹介しきれなかった面白いところがあったので、
そこをちょっと紹介しながら、
最後、僕の未来のイメージにつなげられたらいいな、というふうに思ってスタートしたいと思います。
S・M・L・XL の共有デザイン
それは、「地域社会圏主義」のファシリティの共有というテーマですね。
この「地域社会圏主義」というのは、
ひとつの大きな、500 人ぐらいの世帯というか、
500 人ぐらいの人間が住んで暮らすっていうところの大きい建築物の中にあって、
その 500 人という人たちが、
それぞれ自分たちの寝るところとか、あとお店とか、専用部分もあるんだけど、
それとは別に共有の、他の人とシェアする部分もいっぱいあって。
そのシェアする部分っていうのは、具体的にどういうふうにデザインされているのかっていうのが、
けっこう細かくデザインされていて、面白いなと思ったりしたんですね。
それはS、M、L、XL っていう人数規模によって 4 つのグループに分かれていて、
それぞれのグループにおいて、こういう設備が必要だろう、
この規模であればこれぐらいの設備だろう、っていうふうなものがだいたい書かれていたりします。
たとえば 「S」は 5 人から 7 人ぐらいの大変小さな少人数のグループなんだけど、
だいたいこの 5 人とか 7 人っていうもので、
少なくともひとつは共有しておこう、置きたいねっていうものは何かというと、
ミニキッチン。水回り。物を洗ったり、料理したり、ちょっとしたものをコーヒー入れたりね。
そういったミニキッチンとか、あとはおトイレ、あとはシャワー。
こういったものが水回りを共有するグループとして、
5 人から 7 人の規模でひとつ、
特にでもこうあるようなイメージだ、というところですね。
次に 「M」 というのが、30 人から 45 人ぐらいの規模で、
ひとつ成り立っているものだというところですね。
これは何かというと、エネルギーですね。
この本には太陽光発電とか太陽熱利用っていうものも書かれているんだけど、
今だとそれ以外の地熱とか水力とか風力とか、
いろんな自然エネルギーっていうのが、その場所、どっちによってもできるものというのが
いろいろあると思うので、
未来だともっともっと多様なものっていうのは、僕はイメージしたいなと思うんだけど。
そういった自然エネルギーですね。
それを 30〜45 人で十分まかなえるだけの供給ができている。
それぐらいにしっかりと。
このエネルギーに関しては、この「地域社会圏主義」という建築の中においては
担保されていますよ、保証されていますよ、っていうところですかね。
次に 「L」。120 から 150、それぐらいの規模において1つあるといいね
っていうものの単位になります。
で、それは何かというと、ビストロとかキッチン。
いわゆる複数の人たちが集まって、ご飯を食べるような場所ですね。
そういったものが、少なくとも 120 から 150 必要な規模で大きくあるといいのかな、
っていうところですね。
あとはスパ、ランドリー。
あとはコモン収納。いわば共有の物置小屋みたいなところですかね。
あとは発電機ですかね。「ジェネレーションシステム」というふうにありますが、
そういった電気設備のインフラの配線のようなものかな。
そういった単位のものが、120 から 150 の単位でひとつある、というところですね。
このあたりは、少なくとも 120 人っていうような 100 人以上において
最低ひとつはあるといいな、というところ。
でもスパ、ランドリーは洗濯物だから、
120 から 150 に 1 個だとちょっと少ないよね、と思ったりしますよね。
むしろ S のグループにランドリーは欲しいよな、とか思ったりするし。
逆に、このいかにファシリティのこういった共有のものを豊かに、
みんなが「ここを使いたいな」と思えるぐらいな魅力的なものであるか、
というのが、とても大きいポイントですよね、きっとね。
で、最後は 「XL」 っていうものが、500 人にひとつあるようなものだと。
これは生活サポート全般を共有するグループ、ということで書かれていて、
500 人が生活するときに最低限サポートするような形であるようなものですね。
それは生活のステーション。
それは 24 時間稼働しているような、生活の困りごととか相談とか、
そういったところに対応できるような場所が、
最低 500 人という規模においてはひとつ必要だろうと。
で、あとはここにはコンビニエンスストア、とありますね。
コンビニっていう言葉よりも、多分そのいろんな生活用品とか身の回りの必要なもの、
必需品が購入できる、そういった施設っていうのがしっかりと、
かなり大きく、きっとデザインされないと 500 人も多分まかなえないと思うので、
それぐらいは大きい規模の、そういったストアっていうのが整備されるイメージなのかなと思いますね。
あとは介護・育児スペース。
これも 500 人という規模の中に最低ひとつ欲しいよね、というふうに書かれています。
この「スペース」とあるので、ここの使われ方というのは、
子どもたちが自由に遊べるような場所、広場みたいなことになるのかな。
でも広場がね、500 人規模にひとつだったらちょっと少ないなと、個人的には思うので、
L ぐらいに小さい小規模のスペースとか、そういうのがたくさん欲しいよね、とか思ったりしますよね。
人数スケールから見えてくる暮らしの解像度
これもあくまでもひとつの理想の形なのかなと思うんで。
面白いのは、こうやって S、M、L、XL っていう形で、
その人数規模によって、どういった共有部分を単位で賄っていきましょうと、
というふうにデザインされていることによって、
そこの中で人々がどういうふうに暮らしているのか、暮らせるのかというイメージが、
少し一段階、解像度が高く見えるな、想像できるな、というふうな感じが僕はしました。
なので、こういったところも 200 年後の世界というところにも結びつけてると、
それぞれのあり方がどういうふうに共有されているか、共に使われているか、
というところをイメージしていくと、いろいろ解像度が高く見えるのかな、と思ったりします。
少なくとも 200 年後といえども、
人間の生活にとって必要品というものは変わらないので、
そこはどうしても出てくる。
人が飲み食いする場所、料理する場所とか。
あとは料理するだけではなく、生産する場所も必要ですよね、結局はね。
こういうところに、それ以外に菜園とか果樹園とか、
いろんなものが栽培されて、置かれているとか、なっていると面白いなと思うし。
それも、いろんな地方とかね。
海沿いであったら、そういった漁業につながるようなあり方というのも
またつながっているのも面白いし。
あとは、こういったトイレとかシャワーとかお風呂。
身の周りをきれいにするようなものというものは、
200 年後においてももちろん大切になっているもの、
それは変わらないと思うので
そういったものがどれぐらいのあり方で、どういうふうに日々使われているのか。
どんな形でメンテナンスをされているのか。
なんかそのあたりもイメージしていくと、
いろいろ細かく解像度が高く見えてくるのかな、と思ったりします。
専任の人がいないあり方
今のように、専任の何か誰かがいるようなイメージではないなと思うんですよね。
その掃除の専用の業者がいる、じゃないけど。
そういった小さなグループにしても何にしても、
それをまかなって運営するっていう専任の人というのは、
あんまり僕の未来の中ではそんなになくて。
いろいろみんな、何でもできる。
何でもできるし、何でもやれるし、フットワークは軽くて、
それぞれ、どんなところにでも自分の力を、顔を出せるし、発揮できる。
まあその中で、それぞれ好き嫌いもあるし、
「これをもう少しやりたいな」「これに専念したい」という人は、
もちろんそれができるような環境だったりするし。
そういったところもあるといいかな、と思ったりしますよね。