“present”から考える今と贈与の関係(2)

“present”から考える今と贈与の関係について、前回の投稿では、

presentの意味を伝える名言・presentの語源・「贈与」としての”present”

について書きました。

 

贈与としての意味には、僕たちが、

気づかない内にどこかから届いていたその贈与の存在に気づくことができるか、

がとても大きな鍵だと。

 

そして次に、もう一つのpresentの意味、

「今」について少し考えてみたいと思います。

 

「今」としてのpresent ヴィパッサナー瞑想にて

この「今」というものを考える時に、思い浮かぶのは、

2018年に体験したヴィパッサナー瞑想合宿での経験です。

迷ってるなら行ってほしい。ヴィパッサナー瞑想合宿体験レビュー

 

この10日間の体験で得た

現実、そして感覚というものの捉え方は、

常に「今自分が感じていること」へ目を向ける態度でした。

 

今、僕の体は、どこに何を感じているのか、どんな感覚なのか、

それだけをずっと見ていくのです。

それは常に「今」という意識が、自分の感覚と一体になっていることを

教えてくれる体験でした。

 

僕たちの日常では、頭の中では未来や過去に行き来し続けています。

今手にしている作業も、

「〇〇のため〜」という目的のための手段になっていて、

それ自体で楽しむということは少なくなっている生活が久しく感じられます。

 

アウグスティヌスの時間論

今について考えるとき、とても好きな本がいくつかあります。

まず、古東哲明氏による『瞬間を生きる哲学』(筑摩書房)です。

この本の冒頭に、アウグスティヌスの言葉が紹介されています。

未来も過去も存在しない。それゆえ、過去(praeteritum)・現在(praesens)・未来(futurum)の三つの時間があるということはできない・・・在るといえるのは、<過去の現在>、<現前しているものの現在>、<未来の現在>である

(Augustinus, Confessiones, Ⅺ-20’)『瞬間を生きる哲学』著:古東哲明 P17より

この言葉は、アウグスティヌスの時間論として、

とても有名な言葉です。

 

この言葉が指ししめすように、僕たちの頭の中でいくら未来のことや過去のことを思おうとも、

「未来を考えている・想像している今」だし

「過去を振り返っている・思い出している今」ですよね。

タイムマシンでもないかぎり、未来や過去そのものには行けない。

僕たちは、常に「今」という中にしか存在していないことが分かります。

(タイムマシンで過去や未来に行けたとしても、結局の所、「過去」「未来」という舞台を体験している「今」の自分でしかありませんが・・・)

 

今との関係

次に、『ニュー・アース』(著:エックハルト・トール サンマーク出版)という本があります。

スピリチュアル本という分類なので、好き嫌いがあるかもしれませんが、

僕は何度も繰り返し読んでいるくらい大好きな本です。

この本では、「今」についてこのように述べています。

人生で最も根源的で重要な関係は「いま」との、と言うのか、どのような出来事であれ「いま」という時がとった形との関係である。この「いま」との関係が機能不全なら、その機能不全はあらゆる関係、あらゆる状況に反映されるだろう。簡単に言えば、エゴとは現在という時との関係の機能不全であると定義してもいい。あなたが現在という時とどのような関係でいたいかを決められるのは、いまのこの瞬間だ。

『ニュー・アース』著:エックハルト・トール P218

上のアウグスティヌスの言葉であるように、

僕たちには「今」という時間の中にしかいません。そして、僕たち一人ひとりが

自分の「今」との関係をどう扱うのか、ということを決めることができるのも

まさに「今」です。

 

ここで言われている「いまとの関係の機能不全」とは、

今、自分が何を感じているか、考えているかに気付いているのではなく、

<過去の現在>もしくは<未来の現在>の中にずっといて、

それが現在であると分からない状態を指すと言っていいでしょう。

 

例えば、悩みを抱える、ということは、とっても苦しい状態ですが、

その多くの部分には、

<過去の現在>もしくは<未来の現在>の中にずっといることであり、

<現前しているものの現在>、「今」から切り離されている自分があります。

つまり、ネガティブな出来事や記憶というものが、

僕らの頭の中で反すうされることで、ネガティブな思考とつながって、

その状態から抜け出せなくなってしまうのです。

現在という瞬間との機能不全の関係は、どうすれば克服できるか?いちばん大事なのは、自分に、自分の思考や行動に機能不全があると見極めることだ。それを見抜くことができ、自分と「いま」との関係が機能不全だと気づけば、そのときあなたは「いまに在る」。事実を見極めることで、「いまに在る」状態が立ち上がる。機能不全を見抜いた瞬間、その機能不全は解体し始める。

『ニュー・アース』著:エックハルト・トール P222

 

ヴィパッサナー瞑想でも、体の感覚にアンテナを張ると、

自分とは、常に「今ここ」にいる存在であると、気づくことができます。

この、今にあることに気づくことが、「いまに在る」状態です。

 

またマインドフルネスの状態を心理療法とつなげた

「マインドフルネス認知療法」という治療法も

第3世代の認知療法の1つとして確立しています。

 

では、改めて”present”の言葉である、「贈与(贈りもの)」と「今」

これらの言葉をどうつなげて考えることができるでしょうか? 

贈与という、

「気づかない内にどこかから届いていたその存在に気づくこと」

との関係は?

 

次回に続きます。