読み終えて

感想を一言。
生まれ変わりを信じるかどうかを論点にせず、その意見(価値観)が人々にどのような効果を与えたのかを、いくつかの証言に基づいている点はとても好感的。真理が何かなどではなく、現象が人々に与える影響から、この「生まれ変わる」という人間の生命観を考えている。
これはこのような題材を扱う書物としては新しい視点でよかった。
距離を置いて読むことを前提としていただけに、その証言に感動を覚えることが多かった。ただしそこからの展開ではやや物足りなさがある。それはこのような「生まれ変わり」という認識からの展開に目新しさが感じられなかったからだろうか。確かに展開されている話は、生きている私たちにとって、プラスとなるようなものである。
この「生まれ変わり」を信じる、認めることで、自らの生命観の「価値観の転換によるブレイクスルー」が効果的に発生するだろう。それはとても素晴らしい。
だけど、何故人間は存在するのか、こればかりはわからない。「生命を発展させ、人類という名ので知られる大いなる冒険に参加しようとする、勇気を持った意識体」というが、それだけじゃ足りない。嬉しくはあるけどね。
また生まれるためには目的があり、計画がある、ということも、生きているこの「無常の爆発」というか、「空虚な充溢」というか、悩み苦しむ存在そのものの美しさを見いだしてきた人間観からは薄っぺらいというか、そんなものだけじゃないぞ、みたいな言葉が徐々にでてくる。
僕個人としては、ある局面において、このような認識を利用して、人生を肯定して生きていければいいだろうと思う。「生きている」私たちには「生きている」ことこそが大事、とは生の本質がどうあれ同じなのだから。
著:飯田史彦 PHP文庫
生きがいの創造 “生まれ変わりの科学”が人生を変える