里山という未来
アグロエコロジー会議の中で、
里山文化に関してレクチャーをしてくれた林良樹さんの話が大変刺激的でした。
林さんは鴨川という里山で活動されている活動家です。
かつて鴨川は他の地方地域と同じく、限界集落として捉えれていたそうですが、
限界集落から希望集落への転換を目指して活動されています。
そこでは日本国内・国外からの移住者が少しづつ増え、
海外の方との交流も田んぼが外交の場であるかのように
村の方々との交流も盛んなそうで、
従来のイメージである「地縁血縁」を超えた共同体として生まれ変わりつつあるそうです。
この「地縁血縁」を超えた共同体、というフレーズは
まさしく未来に対するイメージそのものだと感じます。
また村では困っている高齢の方々はたくさんいるので、
その手助けを仕事として考えると、仕事そのものはいくらでもある、
むしろ足りない状態だとか。
それは直接収入に結びつくような従来の経済で語られる労働ではないにしても、
農業で自給しながら生活できる収入を得つつ
助け合いながら信頼関係を築き上げる生活が成り立つ、
そんなコミュニティを生み出そうとされています。
また「森の文明」とのフレーズで、
里山に残る文化を引き継ぐことを目指されています。
その土地に住んでいる古老の方々を
「村の図書館」という表現で
古くからの知恵を継承されている存在として尊敬し、
その知恵を引き継ぐギリギリの状態になっているという危機感とともに
これからの未来における知恵が僕たちの足元にある
という自覚と継承の大切さを話されていました。
分断された世界を繋ぐ、肯定する力、
持続可能な文化としての里山、
そこには楽しさ、やすらぎ、美味しさ、そして美しさが存在していると言います。
かつて田舎や限界集落と呼ばれる地域は、
現代が生み出した生産と消費の分断する力によって
美しさを失ってしまってしまいましたが、
林さんの語られる里山の美しさは、目標として目指す美しさではなく、
「結果として美しくなる」村とのことです。
誰しも美しい場所で住みたいという願いを、
この話を聞いて、そうした願いを失っている自分に気づきました。
里山文化に関しては、
思想家の内山節氏の本などですこし知った記憶がありますが、
こちらのレクチャーを聞いて、
新しい未来的ビジョンの実践的場であるという感慨を受けました。