人と土地と食べ物と

人と土地と食べ物と

「そろそろスローフード 〜今、何をどう食べるのか?」 島村菜津+辻信一

こちらの本から、辻さんの話として、水俣の闘争の先頭に立って活動されていた緒方正人さんの話に、とても感動したので紹介します。

 

緒方さんは、若いときには、加害者であるチッソ株式会社や政府の責任を追求し、補償を勝ちとるための水俣病闘争の、最先頭に立っていた。途中で闘争から退いて、ひとりで行動しながら、自分のうちで、水俣病から学んだことを思想として深化させていった。結論として「いろいろあったけど、水俣病については3つのことだけ覚えときゃいい」と言うんです。ひとつは、魚があぶない、これが原因らしいと言われてからも、漁村の人々は食べつづけた。2番目は、胎児性の水俣病がでてきても、女たちは避妊したり堕胎せず、授かりつづけ、生みつづけ、育てつづけた。3番目は、たくさん殺されたけど、こちらからはひとりも殺さなかった。 P102

 

この3つのことは、本当にすごい。言葉が出なくなるほどに凄まじく、それだけに一層もどかしい思いを抱いてしまいます。なぜこのような覚悟で生きることが出来たのか、以下のように書かれています。

 

なぜ食べつづけたかというと、古来、人が何千年何万年と授かりものとしていただいてきた魚こそが自分の存在の基盤なんだ。自分は何者かといえば、「魚を食べるものだ」と。そこを信じられなかったらもう自分という人間はあり得ない。人々が魚を食べつづけたのはそういうことではないか、と緒方は考えたわけです。

 

この言葉は、人が食べることと命を紡いできた土地に対しての、とても根源的なところに立脚した言葉に思われ、もはや住む場所や食事が極めてライトに分断されてしまった現代に生きる自分のような者には、なかなか想像も出来ない認識なんですけど、ただ、とてもとても感動しました。

現在で言えば福島の場合が、この緒方さんの言葉のように当てはまるのだろうかどうか、考えてしまうわけですが、そんなこと分かるはずもありません。ただ人と土地と食べ物との関係は、理屈ではないところで人々を支えているのだ、という事をこと言葉で知ることが出来ました。