一つの依頼

すこし前の話ですが、
僕の絵を見てもらった母親の知人から、一つ絵を描いてほしいと頼まれた。
その人は癌を告知されて残りあと数年という命でもあるらしい。
依頼を受けるというのはとても嬉しいことだ。
今回も素直に嬉しかった。しかしすぐに、その人が今自らを支えている以上の、何かを僕は絵で表現できるだろうか?という疑問がおこる。
その人の、残りの人生と共に暮らすことのできる何か?
その人の、今生きていることを、喜びを表す何か?
僕の生死観?そんなもの、そこで生きている人にとっては、なんとまあ生意気でカッコつけで、鼻につくものだろう。足場がないのだ。恥ずかしいばかりだ。
だけど今生きていることはその人と僕は同じ。引っ込んでばかりでもいられない。
あまり囚われずに自分らしさを追及することにしたい。譲歩から始まったのでは何も作品は生まれないから。