爪きり
足の爪を ぱちりと切って
とんだかけらを 拾い上げ
ちいさく折り畳んだ ティッシュペーパーの上に
そっと置いてあげる
午後の日差しが となりの家の そのむこう
赤い空が やってきた
わたしの足を なでていく
わたしの腕を とおりすぎ
部屋のとびらの隙間にそって
洗い立てのシャツが染まる
ちいさな爪の ひとかけら
時間の光を うけとって
季節の光を 反射させ
やさしい風と いっしょにころころ
足の爪を ぱちりと切って
ぱちり ぱちり ぱちりと切って
赤い空に包まれた ちいさなわたしの足をさすってあげる