23歳の僕へ語りかける言葉

23歳の僕へ語りかける言葉

ちょっと声をかけたくなって、出てきたんだよ。

いや、なに、世間ばなしというわけでもなくてさ、

顔を見て、一緒にいる、ただ、それだけのためにさ。

「孤独でつらいよね」とか

「自分が嫌いで苦しいよね」なんて

分かったようなことを言って、こっちが自己満足するために声をかけたんじゃないし、

そもそも、いきなりそんなこと言ってくるやつ、気持ち悪いよね。

といいながら、こうして手ぶらで、特に何の用事もなく訪ねてくる俺もキモいか。

誰とも話したくないとは思うし、

人がいるだけで、気を使って、変なアンテナ立ててしまって、

自分がどんなことを言ったり、やってしまうか、気が気でないかもしんないし、

まったく違うこと思ってるかもしれないし、

一人の時間を邪魔されて腹が立ってるかもしれないけど、

ちょっと上がらせてくれよ。

夕方になって、日が暮れてきて、西日の当たるガラス窓は

今、どんな色に映ってるんだろう。

ラッキーストライクの吸い殻と、小さい黒い箱のような14型テレビ、

六畳一間に似合わない3ウェイスピーカー、

一人旅の途中にパリの古着屋で買った、お気に入りの薄い茶色の皮ジャケット。

ああ、ちょっと体には小さいぐらいの、微妙に合わないサイズだけど、好きだったよな。

喋ろうとしなくてもかまわんよ。

一服しようや。