#017: 高層ビルの自然解体プロセス
『未来の世界を想像するチャンネル』(2025/8/12収録)。
この番組の最初のほうにもお話ししたんですけど、
僕が未来の 200 年後の世界にイメージする最初のシーンというのが、
東京の新宿の高層ビル街ですね。西新宿にあたるところ。
本当に 200 メートルを超えるような、大きなビルが無数に立ち並んでいる街だったりするんですけど、
僕が今仕事しているところは、あそこら辺にあって、週に 1 回とか月に 1 回行ったりするんですけど、
そのたびにやっぱり見て思うのは、
「これ、このあとどうすんだろうな……」っていうのを、いつも思うんですね。
今はまだ、こんだけ人が動いて、ビジネスが成り立って、
今の社会の仕組みで成立している状態のものだから、
あれだけビルがあって、人が入って、テナントが入って、運営できてはいるけども、
まったく(状況が)変わったときに、
この役割が終わったときに、どういうふうに変わっていくのかな、
っていうのをよく想像したりしていました。
なので、僕の頭の中に最初にある未来の世界観というものは、
この高層ビルがいっぱい立ち並ぶ、新宿っていう都市の、
それがどういうふうに自然の中に舞い戻っていくのか、
っていうプロセスを考えたり思ったりする、っていうのがあったんですけど、
それを少しずつ、詳細にというか、段階を追って考えてみようかなと思ったりして、やっていました。
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そもそも 200 年後の未来の世界の、200 メートル超えるようなビル。
もちろん一気に短期間で解体するっていう手法もあるみたいなんですけど、
僕はそれは未来の世界では採用してなくて。
そうではなくて、その土地とか風土に合わせて、
その自然の中で緩やかに変わっていきながら、
自然の進行に近い速度で、ゆっくりと解体が進んでいく。
その解体のスピードを、少しだけ人の手を加えることによって、
計画を立てて、管理をしながら進めている、みたいな感じのイメージですね。
なので、200 メートルとか、こういった大きいビルが、50 年とか 100 年とか、
それぐらい複数世代、一人の一世代とか。
一つのプロジェクトですぐ終わるっていうものではなく、
その土地の流れというか、時間の流れとともに、ゆっくりと解体していく。
それを、いえば 100 年とか、ある程度しっかり長いスパンの中で終えていく。
そういったことが計画としてちゃんと立てられて、進められているような世界ですね。
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となると、いきなり 200 メートルもあるような高層ビルを解体させていくので、
いろんな手順とか、それぞれの部分部分に合ったふさわしいアプローチ、みたいなものが
必要になってくるのかな、と思ったりします。
例えば 100 年のうちで、それぞれ時期・時間に合わせて、
どういった手法が取られていくか。
どういったものが管理とか監視のメインの作業になっていくかっていうのも、
最初のところと終わりの頃とは全然違うだろうし。
あとは、200 メートルっていう上の部分、上層部。
ビルの上層部の部分とか、そういったところを処理しているような在り方と、
真ん中あたり、中層部での対応。
さらに地面に近い下層部。
そこへのアプローチって、それぞれの場所でのアプローチもまた違う。
そういうふうに、もちろんなっている、とかね。
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大きく分けていくと、大体の在り方としては、
自然物の影響によって人工の建物――高層ビルだけでなく建築物――っていうものが
解体していくっていうプロセスって、どういうふうになるのかなと。
少し調べると、まずは人の手が最初から入っていくことは、
どうしてもあるかと思ったりしますよね。
ガラスとか、そういったものはどうしてもあるので、
そこはちょっと人の手を最初の段階で加えながら除去していくとか、
そういったところも必要にはなってくるし。
プロセスでは、そのあとに、
小さい建物のそれぞれの隙間、そこに植物の芽とか根、
そういったものが少しずつ侵入していって、
化学的な分解とか、物理的に少しずつ時間を伴いながら破壊していく。
それがだんだん影響していきながら、構造そのものが崩壊につながる、みたいな。
そんなイメージなのかなと思ったりします。
僕の中にあるのは「苔」。苔のイメージが、なぜかとても強いんだけど、
苔が壁の一面に張り巡らされているっていうのが面白いな、と思ったりするんだけど。
調べると、苔っていうのはあまり根がなくて、
すごい水分とか乾燥に弱い、とか。
壁にくっつく、っていうのがなかなかない。
コンクリートとか、ちょっとした壁とかに苔が一面に張りついているっていうのはあるんだけど、
高層ビルみたいなところになるっていうのは、多分あまり現実的ではないんだろうけども。
でも、ちょっとそこはファンタジーを入れながら、
いろんな種類を用いながら、それぞれの階層とか高さ、
あとはそこに合わせる天候とかね。
風の向きとか、あとは天候・湿度。
季節によってもまた違うだろうし。
そういったところがそれぞれ関わりながら、
前面に苔を敷き詰めていくというか、外面に。
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で、さらに、まず上部のほう。上のほうには、
解体が一番最初に進んでいくところなので、
結構しっかりと樹木が根を張るようなイメージですよね。
中層部になると、ある程度、虫とか、動物たちも少し出てくるようなところになるので、
上層部の崩壊をしっかり受け止めながらも、
ある程度少しずつ浸食がゆっくりと始まる段階のところだったりするし。
一方、下層部になれば、上層部・中層部が解体が始まっている。
やがてプロセスが始まる一方で、
そのプロセスで崩壊していくものを受け止めないといけないところなので、
より一時的に、数十年とか、ある程度しっかり保つような仮の壁であったり、素材であったり、
そういったものでさらに補強していくようなイメージもありますよね。
なので、そうやって下を補強して上の崩壊を支えながら、
中層部、さらには上層部のほうが、
まずしっかりと解体のプロセスが順調に進み、
中層部はその次にプロセスが始まるような形で、
上層部と違う速度になって合わせている、と。
それが少しずつ進みながら、
20 年、50 年経つと、どんなもんかな。
上層部のほうは、少しずつもしっかりと解体が始まっていき、
中層部のほうにも少しずつ、蔦とか、
そういったいろんな植物もどんどんどんどん広がっていく。
そのカビとか菌とか、
いろんな植物に対してのアプローチがどんどん始まっていく。
弱体化も少しずつ進む。
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そういったものがバラバラに進むのではなく、
緩やかに「上層部」「中層部」「下層部」という違いが、
しっかりと管理・確認されながら進んでいく。
そういった形で、緩やかに高層ビルというものが、時間をかけて、
土地の中にやがて消えていく、というか、紛れていく、というか。
風景の中に溶け合っていく、という感じがとてもあるなぁと思ったりします。
そういったものを、世代に分けて。
世代によって管理しながら、文化とか伝統とか、そういったものも出てくるだろうし。
ここで、そういった森の管理、解体していくプロセスを見守る人の役割になると、
より今の時代、高層ビルが主役だった時代の人間の見え方とか、
そういったことも感じながら、長い年月かけて見ていくことになるんだろうなと思うし。
解体していく様子そのものを、
美しい景色とともに、緩やかに見ていく。
というのが、すごいテーマとしてあるなぁ、という感じがします。
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最後はもうジャングルになって。
ジャングルになるといっても、その新宿だったら新宿、その土地に合ったふさわしい植物が、
そのあとも適切な環境で育っていくような。
解体されて終わりではないからね。
解体されたそのあとも、その土地はまだまだ続いていくわけだから。
一応「解体」というプロセスは、その 100 年という計画で進められてはいるけれども、
それ以降も、その土地自体は当然あるわけだし。
それ以降にも、そこが自然な形で“残ってしまって”は意味がないので、
そのあとも十分考慮しながら、プロセスそのものも
解体のプロセスそのものも見守っていく。
そういうふうな感じのことを、イメージしたりしています。